植溝内土壌散布(インファロー技術 ※以下、インファロー)とは、イギリスにて開発された種イモの植溝(furrowファロー)の中に薬剤を散布する技術です。植付時に種イモ周辺の土壌に薬剤を処理することで根、茎、ストロンを保護します。インファローにより、期待できる効果としては次のようなもがあります。
国内ではばれいしょの農薬散布にとどまっていますが、海外ではいくつかの畑作物に一般的に普及している技術で、肥料の散布などにも利用されており、この技術の広がりが、農業の省力化に貢献できると期待されています。
インファローでの散布イメージは、ポテトプランターの下部に、前方と後方の2か所の噴射ノズルを設け、植付時に種イモ周辺の土壌に薬剤を噴霧することで土壌由来の病害や初期害虫を防除することができます。
実は、インファローの開発経緯は、アミスターの有効成分が土壌病害に有効であることの発見でした。当時、ヨーロッパではばれいしょの土壌由来の病害に困っていました。アミスターの非常に高い防除効果はわかったのですが、全面土壌混和の処理方法しか存在せず、その高いコストがネックとなりアミスターの普及は進みませんでした。
そこで、機械メーカーとシンジェンタで新しい散布機を共同開発し、高い効果を維持したまま必要部位に必要量を処理できる技術を確立しました。薬量を減らし、コストを抑えることに成功し、今ではヨーロッパを中心に北米やオーストラリアなどでも広くインファローが普及しています。
次の項目では、インファローの具体的な防除効果をご紹介します。
種イモ消毒は、ばれいしょの種子伝染病害の黒あざ病やそうか病の防除には欠かせません。しかし、実は黒あざ病は、土壌中のリゾクトニア菌からも感染します。
黒あざ病に感染すると、ストロンが消失したり、ストロンが十分に伸びずに株元に塊茎が密集し押し合い、変形イモになったり、気中塊茎を起こし緑化イモの原因になります。
アミスター20フロアブルをインファローで周辺土壌に処理することで、土壌のリゾクトニア菌からばれいしょの根やストロンも保護することができ、健全な塊茎の生育が期待できます。
インファローは周辺土壌の殺菌だけではありません。ばれいしょの種イモ植付時の殺虫剤散布でも高い効果を示します。
葉巻病・モザイク病に感染した種イモを植えた場合、重量で50~70%の減収となると言われており、葉巻病・モザイク病を発生させるウイルスを媒介するのがアブラムシです。ばれいしょの生育過程での感染を防ぐには、萌芽したときからアブラムシを防除することが大切であり、植付け時の殺虫剤散布が有効です。
アクタラ顆粒水溶剤をアミスター20フロアブルと共にインファローを行えば、萌芽したときからアブラムシから防除でき、粒剤型殺虫剤の散布作業の手間も省けます。 また、アクタラ顆粒水溶剤の植付け時の散布で、ナストビハムシの幼虫による塊茎被害も抑えます。
今回ご紹介した植溝内土壌散布(インファロー技術)で登録を取得しているシンジェンタの薬剤は下記の通りです。